Eロードバイクを導入しました

弊社は50台以上、10車種以上のE-Bikeを長年運用してきましたが、「日本人女性や低身長の方が乗れるEロードバイクは作れないものか」と試行錯誤しまして、ついに福知山ストークトサイクルさんのお力もあって同製品を試作いたしました。ベースはジャイアントの「Escape R W-E+」で、シマノGRXをつけたものです。

なぜそれを作ろうと思ったか、新型ジャイアントをベースに選んだかをお話ししたいと思います。

前提〜身長155cm以下の人が乗れるEロードバイクが世界にない!

日本で初めて本格Eバイクが出てからずっと、様々なメーカーさんとお付き合いし、あらゆるEバイクを物色してきました。今年1月にはベルギーの自転車見本市まで行って超巨大な欧州のEバイク市場にも触れてきました。

しかし、世界のどこにも、多くのアジア人女性が該当するであろう「身長155cm以下の人」が乗れるEロードバイクが存在しないのです。欧州市場がEロードバイクのターゲットに女性を含んでいないわけでは全くありません。むしろ逆で、「タイム」や「レースの勝利」にこだわらず、純粋にサイクリング体験を楽しみたい方が多い女性層は、Eロードバイクの重要な顧客層になってきています。

単に、新しいマーケットのEロードバイク市場はまず白人優先であるだけでしょう。

なぜ「Eロードバイク」か

これまでのE-Bikeの主力は、欧州市場においてはEマウンテンバイクかEクロスバイク、日本市場ではEシティバイクだと思われてきました。

しかし今年1月にフランスに行った際、ホームセンターにあったEバイク雑誌を見て驚愕しました(そもそもホームセンターやコンビニに「月刊Eバイクライフ」なる雑誌が普通に積まれてる自体が衝撃でしたが)。

なんと製品ページの最初半分は「Eグラベル」で占められていて、後半半分で「その他のEバイク」となっていたのです。

「グラベル」「ロードバイク」について

※非常にややこしい部分なので、間違っている点があればご指摘ください。

私のようなスポーツ自転車初心者には分かりにくいのですが、日本の「ロードバイク」と欧州のそれと少し違います。欧州においてロードバイクは舗装路を快適に走る自転車全般で、多くの日本の「クロスバイク」に分類されるストレートハンドルのバイクも大抵ロードバイクに含まれます。逆にクロスバイクという分類はなく、同ジャンルは「トレッキングバイク」か「ハイブリッドバイク」になると思われます。

一般に日本でロードバイクと言われる、レース規格で高速で走ることに特化したバイクは「エンデュランス」「レースバイク」などになるようです。

一方で「グラベル」という市場も生まれています。これは日本の自転車雑誌で取り上げられているグラベルと一緒で、「キャンプ道具や食べ物を持って行ったり不整地も走ったり、舗装路も早く走れる、幅広いサイクリング体験をカバーする」ための自転車で、太いタイヤ、やや高めの姿勢に車種によってはサスペンションがつくものです。

もちろんEクロスバイクは色々な種類が出ていて、それでも十分電動サイクリング体験は楽しめますし、実際弊社の主力はジャイアントやヤマハのEクロスバイクです。

私はロードバイク乗りでなかったので、正直ドロップハンドルや10段以上の変速がEバイクに本当に必要なのか?と懐疑的でした。実際YPJ-ERというヤマハのドロップハンドルのEバイクを持っていましたが、あまり魅力を感じず中古売却してしまったほどです。

しかし、欧州市場の盛り上がりやロードバイク好きのストークトサイクルさんに推されて、「後で戻せるから」と面白半分で弊社のEバイクを1台ドロップハンドル化してみました。

家のすぐ近くの桜と海がきれいなところを走りに行きました

乗って、分かったこと

漕いで30分で、私は色々な事がわかりました。ジャイアントは何がしたいのか。ヤマハやパナソニックのE-Bikeに感じていた違和感は何だったのか。

Eバイク(というか自転車)には、2つの哲学がある。

私は自転車全体はそこまで詳しくありませんが、少なくともあらゆるEバイクを見てきて、そのものづくりには大きく2つの哲学が流れていると感じました。

「移動を楽にする」という哲学と、「移動を楽しくする」という哲学です。(とりあえず儲けたいという哲学も資本主義社会なので当然あるのですが)

日本のEバイク(電動アシスト自転車)とは、移動を楽にするためのもの

PASシリーズなど日本でよく見る電動アシスト自転車、いわゆる電動ママチャリは、まさに移動を楽にする哲学を極限まで追求した製品です。

免許も要らず、車検も要らず、状況により歩道も車道も走れ、スーパーや保育園や学校や病院に簡単に乗り入れることができ、カバンもレジ袋も載せられる、まさに日本の都市部でのパーフェクトビークルです。

電動ママチャリのターゲット層にとって、移動は苦痛であり、1分1秒に追われる日常と殺人的な日本の都市道路環境において、電動ママチャリはその苦痛を少しでも軽減する救世主なのです。

しかしその哲学において、残念ながらEバイクは「車の下位代替品」になってしまいます。移動の苦痛を真に解決するのは、快適な空間と運動を必要としない「クルマ」であって、日本の全てのトップ層が思い描いているのは無人運転車であり、SF的にはどこでもドアなのでしょう。

電動アシスト自転車は、クルマに乗りたいけど免許や維持費や渋滞や駐車場の少なさから致し方ないから乗らざるを得ない、「残念な乗り物」でしかないのです。

欧州のEバイクは、移動を楽しくするためのもの

しかし欧州のEバイクは全く違うアプローチから入りました。それは、「移動を楽しもう」という発想です。

欧州人の幼少期から培われる自転車文化、完全に車道と歩道から分離された安全な自転車走行環境、何より余暇を大切にするライフスタイルが背景なのでしょう。

仕事においても学業においても生活においても、彼らは日本人の様に1秒を争うのではなく、ちょっと遅れたって楽しくやろう、という感じなのでしょう。

彼らにとって自転車は、友人や家族と日常の移動を楽しくするためのものであり、運動は苦痛ではなく楽しみなのです。

その楽しみをより広い階層の人に広げ、かつより広いエリアで楽しめる様にする、そのためのEバイクなのです。

そこにおいてEバイクは、決してクルマの下位互換ではない、独自の価値をもった商品になるのです。だからこそ日本よりずっと広くて快適な車道を有する欧州の地方部でさえ、多くの人が平日も休日もあえて車でなく、Eバイクに乗っていました。

最近の欧州メーカーのEバイクの低トルク化は、「スペックダウン」なのか

私は去年、ジャイアントの2022年が新発売したEクロスバイク「Escape R E+」を購入した上でレビューしました。

旧来の「Escape RX E+」に対して、価格が3万円ほど上がったのに対し、モーター最大トルクは70Nmから50Nmに低下し、バッテリー容量500Whから400Whに低下しました。確かに部品不足など高騰要因もありましたし、一部の日本市場からは「スペックダウン&値上げ」とマイナス評価も受けたのではないでしょうか。

またトレックが今年出してきたFX+あるいはDomane+においても、最大トルクが50Nmとなっています。

スペシャライズドのEバイクも同じです。

一方でヤマハの新型ワバッシュ・クロスコアは70Nmの高トルクを誇り、パナソニックのゼオルトに至っては業界最高水準の90Nmを誇ります。

確かに「力こそ正義」の哲学はあります。弊社のお客様でもEバイクにとにかくパワーを求める方も多いですし、パワフルなEマウンテンバイクは私も好きです。

パワーは必ずしも正義ではない

しかし、こと「移動を楽しくする」哲学において、パワーは必ずしも正義ではありません

ジャイアントがヤマハとの共同開発ユニットから離れて独自ユニットにしたのも、トレックが独自ユニット化を図るのも、もちろん内製化で利益率を上げたいという必要性はありながらも、ロードバイクで「走る喜び」を追求してきた両者だからこそ、気づいたことがあったのではないでしょうか。

そして成熟した欧州Eバイク市場においては、それが受け入れられつつあります。主力の新型グラベルの大多数が、低出力・軽量ユニットを搭載しているのです。

私は新エスケープを買って乗って、なんとなくその哲学を感じていました。しかし今回それにドロップハンドルをつけてみて、その真価がわかりました。

ジャイアントの新エスケープは、「身体を動かす喜び」を最大化するもの

ジャイアントの哲学は、電動アシストをただ坂を楽に登らせるだけにとどまらず、自分の身体能力が拡張したかのように錯覚させ、マシンと一体になる感覚を重視したものです。だからものすごく静粛性に気をつかっているし、初動はおだやかでアシストに気づきません。しかし坂に来ると、奇妙なことにほんの軽い疲れでいつの間にか登っているのです。

「人にできるだけ運動させないようにしよう」というのではなく、「人と一緒に走ろう」というユニットの声が聞こえてくるようです。

その思想は車体全体の重心設定にも表れていて、少し前気味に重心を置くことでハンドルは重くならずに漕いだ際の重みを感じさせないという絶妙なバランスを保っています。

そしてドロップハンドルは、体全体の筋肉を効率的に使用させてくれます。

ジャイアントにとってE-Bikeとは、人体の拡張ツールであり、体を動かす快感を最大限に引き出すアイテムなのです。

なぜヤマハのYPJ-ERやWABASH RTに違和感を感じたのか

私はしばらくヤマハのドロップハンドルタイプのE-BikeであるYPJ-ERに乗っていて、先日のサイクルモードでも新型のEグラベルであるWABASHに乗りました。WABASHはまだ全然試乗不足ですが、やはりEscape+ドロップハンドルの感覚とは全く違いました。少なくとも、「なんでこのE-Bikeにドロップハンドルをつけてるんだろう」という私の疑念を払拭することはできませんでした。

それは力強いアシストで坂を徹底的に楽にさせる、というヤマハのコンセプトと、全身の筋力を効率的に使うためのドロップハンドルの組み合わせが、やはり腑に落ちなかったのだと思います。

ヤマハのユニットは確かに素晴らしいです。走る楽しさももちろん味わえるし、ジャイアントの新ユニットに比べて常に強力アシストなのでギアチェンジが不慣れな初心者にも優しいです。

これは、日本市場や、特に力の信奉者の多い米国市場では十分戦えるでしょう。

でもこのユニットには、ストレートハンドルでいい。それが一番合理的な組み合わせです。だからワバッシュよりもクロスコアの方が機械として合理的だと思います。

「ファッションとしてのドロップハンドル」は確かにあります。やはりストレートハンドルより本格的な感じがするし、特にコアなサイクリスト層にとっては重要かもしれません。

ですが成熟した欧州市場で単価のとれるEグラベルで戦うには、WABASH RTはまだ未完成です。まだ、「一体感による体を動かす喜びの拡張」という点を、追求しきれてないと感じます。

私はヤマハの大ファンで、一日本人としてヤマハやパナソニックに世界を席巻してほしいと切に願っています。ですから、せっかく初代Escape RX E+でジャイアントとユニット共同開発した知見を生かして、ジャイアントから徹底的に吸収してほしいと思っています。

そしてその「走る喜び」を少しづつPASシリーズにもフィードバックして、時間に追われる日本人に、特に子供たちに、少しでも「自転車は楽しい」と伝えられる製品を供給していただきたいです。

ジャイアントは女性のユーザーをちゃんと見ている

もう一つ、ジャイアントのすごい点は、女性ユーザーをちゃんと見ているということです。Escape R WE+(あるいはXXSサイズモデル)を見ればわかるのですが、その配色や優美な形状など、単に機能面のみならず、カッコよく体を動かしたい、自転車で楽しみたいという女性ユーザーをしっかり見て、そこにリソースを投じています。

だから適正身長146cm以上というアジア人に優しいサイズを供給しています。もちろんヤマハもクロスコアが適正身長144cm以上というのは素晴らしいです。

ですが各社とも、未だEグラベルでは低身長ユーザー市場は小さいと判断しているのでしょう。ジャイアント(ROAD E+)、ヤマハ(WABASH RT)、ミヤタ(ROADREX i6180)、トレック(DOMANE+)、ベスビー(JR1)、キャノンデール(Topstorne Neo)、スペシャライズド(CREO)などがEロードバイク/Eグラベルを展開していますが、さすがに低身長向けは出していません。

私は、女性ユーザーこそE-BikeとEグラベルの真のターゲットだと考えています。

なかなかロードバイクのコミュニティにアクセスしにくい女性層にこそ、敷居を下げてくれ、サイクリング体験のいいところだけを引き出してくれるE-Bikeは光ります。

そう言うわけで、Livのブランド名かがやくEscape R WE+を改造してみました。

これがどういう市場を開くのか、どういうユーザーがどういう使い方をしてくれるのか。楽しみです。

とはいえ原価は上がりましたし整備所要も増してしまったので、どういう価格で出すかは悩みどころです。近日アップしますのでお待ちください。

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