ウクライナ戦争におけるEバイクの活躍
前職を退職して、ちょうど4年がたちました。
かつて防衛という世界に携わって全く色違いの分野に転職し、起業して今にいたるわけですが、奇妙なことに軍事の分野でも、最近Eバイクが聞かれるようになってきました。
ウクライナ企業の電動バイクが戦争で活躍し、偵察のみならず対戦車ミサイルを搭載してのヒット&アウェイ戦術に使われているということです。
これまでフランス軍、米軍、ニュージーランド軍、オーストラリア軍などがEバイクの戦場投入に関して試験をしていましたが、さっそく使う軍が現れました。
Eバイクが戦争に使われるのは悲しい気もしますが、そもそも自転車は、その歴史と共に軍事用途で注目され、たとえば旧日本軍のマレー電撃戦で大規模に使用され、「銀輪部隊」による不整地の高速突破戦術に用いられました。
その後もスイス軍アルペン自転車部隊や米陸軍空挺部隊でも装備されましたが、確か10年ほど前にそれらも廃止され、「ついに自転車が軍事における役割を終えたのか」と感慨深かった記憶があります。
しかしここにきて、Eバイクが戦場に姿を現し始めました。
私は10年ほど前に、「ステルス化した歩兵・センサーによる戦場監視ネットワーク構築と精密火力打撃による戦術改革」を訴えたことがありますが、その際苦慮したのが、歩兵に長期間活動し、対走行・対空火力などの重装備をいかに持たせるか、ということでした。「めっちゃ体鍛えた一部のエリートにやらせる」くらいしか回答がなかったのですが・・・
というのも、ドローンや衛星、電子戦などによる情報網が張り巡らされ、対空・対戦車誘導兵器が高度に発達した現代戦においてもはや、冷戦期の重装甲戦力は生き残れないのではないか、という点でした。同じく航空戦力も残存が難しく、ステルス機ですら、多方面からのレーダー網の前では難しいかもしれません。
その中でむしろ生き残れるのは、ステルス化された歩兵だと思いました。完全に偽装したスナイパーは、たとえ10mの至近距離でも発見は至難です。
それらが一撃必殺の長距離誘導兵器を誘導し、あるいは対戦車・対空誘導弾・対人狙撃を行えたらなら・・・それは「陸上の潜水艦」になり得るのではないか。
そしてEバイクは、
- 熱を出さない→サーモセンサーに反応しない
- 音を出さない→音響センサーに反応しない
- レーダー反射面積が極小→電波レーダーに反応しない。そもそも潜伏状態の時は草むらなどに完全に隠せる
- 100km超の長距離を、150kg以上の重量物をもって移動可能→対戦車ミサイル、対空ミサイルを携行できる
- 太陽光発電で充電できる→離島などの潜伏ミッションにも対応
- 自転車、原付に近く簡単に乗れる→訓練時間の大幅短縮
- 不整地を進める→道路によらず敵に接近でき、対戦車障害などを迂回できる
- 戦車(10億円以上)に比べてめちゃくちゃ安い(軍用に超強化しても100万円程度)
- バッテリーから他デバイスに給電できる→ミサイルシーカーやセンサーに給電でき、より命中率が高いミサイル・索敵能力の高いセンサーを使用できる。
- ヘリや小型舟艇などで運搬できる
など、現代の陸上戦においては素晴らしい性能を持っています。
例えば、現在航空機の天敵といわれるMANPADS(歩兵携行対空ミサイル)は、ただ一つの弱点として歩兵携行するため軽量化せざるをえず、結果数キロの射程しかなく、高高度からの誘導爆弾攻撃は防げない点です。
しかし最初からEバイク搭載を前提とすれば、より大質量・長射程のミサイルを開発できます。
Eバイクは未だ散発的に遊撃部隊に運用されているのでしょうが、いつか「Eバイク化歩兵中隊」のように大規模に戦力として運用する国が出てくるのではないでしょうか。
例えば、高機動車のような中型車にE-Bikeを4台ほど載せ、
- Eバイク1(対戦車ミサイル2発)
- Eバイク2(対空ミサイル2発)
- Eバイク3(戦場監視レーダー・レーダー標定器装備)
- Eバイク4(機関銃装備)
の4台を1コ組として運用し、作戦に応じて搭載兵装を変更して対応し、敵戦線深くに浸透して伏撃・襲撃によって敵中枢を叩いたり、敵戦力を慚減するのです。
島嶼防衛を任務とする我が国の陸上自衛隊には、まさにうってつけの装備だと思います。さらに災害派遣にもきっと使えます。
是非導入や企業提案を検討していただきたいなと思います。